2019年12月16日月曜日

拝啓 アンナ・カリーナ様/Dear My Sweet Anna Karina


映画『女は女である(Une Femme est Une Femme)』が、あなたとの最初の出会いです。
真っ暗な部屋の中でブラウン管越しに観たその世界に、私は衝撃を受けました。
映画監督であり、また、あなたの当時の夫であるジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard)が作り出す場面ひとつひとつに、息をするのも忘れるほどでしたが、その中でも突出してあなたがものすごく魅力的で、キュートで、完璧でした。
そして、あなたのようなファッションを好むようになりました。
特に「赤色」と「傘」が好きになりました。
あと、フランス語を勉強するための本を買いました。
まったく上達しませんでしたが、「太陽(Soleil/ソレイユ)」が男性名詞、「月(Lune/リュヌ)」が女性名詞ということはすぐに覚えることができました。




映画『気狂いピエロ(Pierrot Le Fou)』が、あなたとの二度目の出会いです。
あなたが歌う『いつまでも愛すると言わなかった(Jamais Je ne T'ai dit que Je T'aimerais Toujours)』と『私の運命線(Ma Ligne De Chance)』が特に大好きで、片言なフランス語で真似をして歌っていました。
ツイストのシーンも大好きでした。
また、余談ですが、タイトルをもじって「気狂いレモン」という自分の曲を作って歌っていたこともありました。
今思えばこの曲は、あなたが主演の『アンナ(Anna)』という別の映画の中で歌われている『太陽の真下で / Sous le soleil exactement』に少し似ています。


他にもあなたとの出会いはたくさんありますが、特にこの2つの作品がとても印象的です。
誰がなんと言おうと、私はあなたに強烈に惹かれ、憧れ、ときめき、うっとりしていました。
「あ、私ってこんな風に感動するんだ」と今まで知らなかった自分を知るきっかけにもなり、また、私の夢、というと少しオーバーに聞こえるかもしれませんが、その時の私のなんとなくのイメージや空想を、あなたに投影していたようにも思います。
そして何より、世界がこんなにもカラフルであることを、あなたは教えてくれました。


私の心は、あなたを忘れることはありません。
いつの日も、振り返るとそこに、あの頃の私とあなたが並んで立っています。
そして、すぐにシーンがパッと切り替わり、ジャン=クロード・ブリアリ(Jean-Claude Brialy)と、ジャン=ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)と4人で、”あの”ポーズをとっているのです。
3・・・2・・・1・・・action!