2018年12月27日木曜日

EACH TIMEは、J-POPオンリーの夢の国

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


マイケル・ジャクソン生まれ、J-POP育ち。
UKロック〜エレクトロニカ経由、ボサノヴァとフレンチ乗り継ぎ、ダンスミュージックに到着して数年。
好きになったところが、自分の居場所。
それぞれ滞在時間の長さに差はあれど、きっとみんな一緒だよね。

DJというひとつのアウトプットの手段を手に入れた私は、その海を自由に泳ぐことができて幸せです。
日本のDJシーンも、賛否両論、いろんな意見があるけど、いろいろあるからおもしろい。
特に90年代以降は、テクノロジーが発展したことや、考え方が多様化してきたことで、あらゆる可能性がどんどん広がっているから、生活も文化も政治も概念もすべてのものが、その恩恵/影響を受けていて。
それらをただ否定するのではなく、”面白がる”ってことが、この世界を豊かにするひとつの方法なんだと思います。
EACH TIME》って、その”面白がり”があるから、こんなに愛されるパーティなんだと思うのです。

普段はアンダーグラウンドなクラブシーンを中心に活動していたり、世界規模で有名なクラブ(ベルリンのPanorama Bar等)でプレイしているDJが、まさかのJ-POPセット!という意外性はもちろんなんだけど、誰よりもそれを面白がっているのが《EACH TIME》のメンバーで、彼らこそが、このパーティの価値そのものなんだな、とあらためて感じています。

東京のレコード店の代表格「テクニーク」の顔であり、あらゆるジャンルの”知る人ぞ知る”音楽を知り過ぎてしまった男、Tommyさん。
日本語オンリーのダンスミュージック界の一線で活躍する、誰よりもエフェクターを駆使し、誰よりも最短で曲と曲をつなぐJ-POP DJの虎(その名の通り)J.A.G.U.A.R.さん。
瞬間瞬間を切りとりながら、じわじわとその場を楽園色に染めてみんなを幸せにする紅一点の妖精、アッキーことpAradice
歌謡曲からシティポップまであたたかみのあるサウンドが印象的な、謎のDJ名のエディーマーフィことマイケルJフォクスさん。(名前の由来を毎回聞いてるけど、毎回酔っ払ってて覚えてない…ごめんなさい)
最近は移動カレー屋さん(「skeema」をよろしくね!)だけど、根っからのクラブマイスター兼ブッキングマスターでそのがんじがらめの運命を解くことはほぼ不可能な、クラブの生き証人となりつつあるKAMOくん。
電気グルーヴで例えるならピエール瀧、米米クラブで例えるならジェームス小野田、Happy Mondaysで例えるならベズ、のムードメーカーの小祝くん。

それぞれ違う場所で活躍している人たちがぎゅっと集まることで生まれる魔法、みたいなものが《EACH TIME》にはあるんです。
私は、もしかしたらその部分が、一番好きなのかもしれない。
J-POPというテーマは、もしかしたら二の次なのかもしれない。
ゲストとしての出演回数が最多(3回目)ということもあって、見える世界が拡張してきてるのかもしれない。

と言いつつ、今回のために1000曲以上をiTunesに投入して、新しい曲から懐かしい曲まであれこれ選曲しました。(実際に聴いたのはその半分以下だけど)
Zeppet Storeまでたどり着けたことに、自分でも少しびっくりした…。(当時気がつかなかったけど、かなりRadioheadを想起させる。)

どこまで吹っ切れるかは未知数ですが、2018年ももうすぐ終わりということで、かなり盛り上がる予感!
枕元にその予感をそっと置いて、今夜はそろそろ眠ります。
DSKEさんのDJも本当に楽しみだなぁ...。
明日、SALOONでお会いしましょう!



▼Infomation
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EACH TIME

2018/12/27(thu) at SALOON[代官山]
20:00-|Door ¥1,000

GUEST DJ:
DSKE (motorpool)
DJ EMERALD

DJ:
TOMMY(TECHNIQUE)
J.A.G.U.A.R. (PURE IBIZA / ゆけむりDJs)
pAradice(LIFE FORCE)
マイケルJフォクス(CITY OH BABY)
KAMO

HOST:
小祝

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今年最後の開催となるEACH TIMEは、ゲストにPanoramabarやTresorなどで世界的な活躍を見せ、motorpool @CONTACTのレジデントを務めるハウスDJのDSKEが日本語セットで初登場!
ゲストとして最多となるDJ EMERALDが3回目の出演!
和物と言う一般的なDJとしては未だ色物としてみられがちなこのジャンルを用いて、逆説的にそのDJのスキルの高さを実証するこのパーティ、グルーヴ感満載でお届けします。





2018年11月15日木曜日

最後の《Friday Lounge》、時間、私たちの住む世界、川、《「メモ」よりも少し大切で「夢」よりも少し現実的なもの》

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


「3番目の金曜日」に会いましょう、と合言葉のように言い続けて、もうすぐ1年。
私にとって、今年の「3番目の金曜日」は特別な日だったけど、それも今週末で最後。
年始(と言っても2月だけど)に書いた記事のテーマである《「メモ」よりも少し大切で「夢」よりも少し現実的なもの》について少し。


すでに実現したものもあれば(引っ越した、とか)、途中でなくなってしまったものもある(毎月、部屋に花を飾ろうと決めていたけど、引っ越したタイミングでその習慣が途切れてしまった、とか)。
良くも悪くも、自分の意思ではどうしようもできない、想定外(想像以上)のこともあったりもした。

思わずにやけてしまうほどの幸せなことがあっても、泣き叫ぶほどの辛いことがあっても、たとえ私が息をしていても、していなくても、「時間」は、ただ淡々と、粛々と、無条件に流れ続けている。
今のところ、私たちの住む世界は、そういう世界だ。


そもそも《「時間」とはなんなのか?》という問いの答えは、まだ定まっていない。
AさんとBさんで時間の進む速度が違う、すなわち、「時間」は観測者によって相当的に変化する、という相対性理論。(これはなんとなく聞いたことがある)
はたまた、「時間」は一方向に流れているわけではなく、様々な方向に、例えば「現在」から「未来」に向かっているだけでなく、「未来」からも流れてきている、という量子論。
答えがひとつではない、というこそが、すでにもう答えなのかもしれないし、《「時間」が流れてる》というのも、人間が勝手にそういうことにした、というだけであって、実際に「時間」を見たことがあるという人は、いない。

その「時間」とやらを、自分の手にとるように感じたい。そのためにはどうしたらいいんだろう...?
それこそが、今年の私のテーマだったのかもしれない、と、今、あらためて思う。


「3番目の金曜日」=《Friday Lounge》は、1年という時間軸の中で流れる、ひとつの「川」だった。
「時間」と同じように、その「川」も流れていた。
水面がキラキラと輝いていたり、その中を鹿がひょこっと横切ったり、激しい雨に降られて妖しく螺旋状に渦を巻いたり、一本だったのが複数に分かれていったと思ったら、また合流したり。

その川遊びは、準備をしている段階からいつもわくわくしていて、「アプレミディであの人がDJしたらどんな感じなんだろう〜」という妄想に、ほぼ毎日、取り憑かれていた。
そして、いざ「3番目の金曜日」の当日になったらその川の中にじゃぶじゃぶと入っていって、川の流れを全身で浴びる。(来てくれたみんなと一緒にね!)

それも、今回で最後と思うとさみしいな。
でも、めいいっぱい楽しみたいと思います。
というわけで、私が担当の最終回のゲストのご紹介。
DJ SODEYAMAさんとHi-Rayくんです。


DJ SODEYAMAさんは、日本が誇るフェス『WIRE』『Rainbow Disco Club』などに出演し、近年はNINA KRAVIZのレーベル『трип』からのリリースをはじめ、ヨーロッパ、ロシア、アジアなど世界中を馳け廻るDJとして、また、THE PEOPLE IN FOG名義も含め、数多くの楽曲をリリースしている日本のクラブシーンを牽引する存在です。
SODEYAMAさんのラウンジ/サロン的なDJセットを体感できる機会は、ほぼ皆無。(と言っても過言ではない)
ちなみに、日曜日はMasters At Work in Japan@ageHa(11月18日)、そして来週末は、レーベルメイトでもある期待のモダン・テクノ・アーティストであるNikita Zabelinの来日公演@VENT(11月23日)が控えており、まったくベクトルの異なるシーンでのプレイがそれぞれ楽しめる、ソデヤマ月間をぜひご堪能ください。




Hi-Rayくんは、ロサンゼルスの非営利ネット・ラジオdublabの日本ブランチ『dublab.jp』のメンバーでもあり、都内を中心に魅力的なアンダーグラウンド・パーティを仕掛け続けるオーガナイザー兼DJ。
物腰は柔らかいけど尖ったセンスの持ち主で非常に感度が高く、「あ、この曲、あれっすよね!」と、誰も知らないような曲で無邪気に反応してくれる、コカ・コーラが好きな少年…青年です。(お酒があまり得意ではないらしい)
つい先日、汐留のPark Hotel Tokyoとdublab.jpのコラボレーションによるプレイリスト・シリーズがSpotifyにアップされたばかりでそちらもいい感じ。




言わずもがな、ですが、今回ももちろん、信頼できるおふたり。
とーっても楽しみ!

というわけで、今、私たちの住むこの世界で、2018年11月16日は、私にとって最後の「3番目の金曜日」。
ぜひ、この機会にアプレミディにいらしてみてください。

そして、もう二度とアプレミディに行けなくなるわけではないので(もともと1年間って決めていただけ!)、「あの人がアプレミディで...」という私の妄想もまだまだ流れ続けているので、またどこかで実現できるように、《「メモ」よりも少し大切で「夢」よりも少し現実的なもの》として、すぐそこに置いておこうと思います。

量子論によると、この私の行動はすべて「未来」から来てることになるのかぁ...。





▼Infomation
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Friday Lounge

2018/11/16 fri at Café Apres-midi
OPEN / START 20:00
CHARGE: 500YEN

Guest DJ:
DJ SODEYAMA [трип / ARPA] - Lounge Set -
Hi-Ray [Details / dublabjp]

DJ:
maa [Hamon Radio]
DJ Emerald
Toru Hashimoto [SUBURBIA]

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『WIRE』『Rainbow Disco Club』などに出演、近年はNINA KRAVIZのレーベル『трип』からのリリースをはじめ、ヨーロッパ、ロシア、アジアなど世界中を馳け廻るDJとして、また、THE PEOPLE IN FOG名義も含め、数多くの楽曲をリリースしている日本のクラブシーンを牽引する存在DJ SODEYAMAのとても貴重なラウンジセット。
そして、ロサンゼルスの非営利ネット・ラジオdublabの日本ブランチ『dublab.jp』のメンバーでもあり、都内を中心に魅力的なアンダーグラウンド・パーティを仕掛け続けるオーガナイザー/DJのHi-Rayを迎えて。
拡張し続ける両者が提示する、現代のサロンミュージックを体感しに、第3金曜日の夜の隙間へ。
どうぞお気軽にお越しください。



about《Friday Lounge -The Third Monday of the month-》
2018年の毎月第3金曜日は、渋谷と原宿のちょうどあいだに位置するビルの5階「Café Apres-midi」にて、maa、Wataru Sakuraba、DJ Emeraldの3人のDJによる「Friday Lounge」を開催しております。



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2018年10月20日土曜日

私たちの世界、点、新宿について

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


東京生まれ、東京育ち。
自動車も、自転車も乗る機会がほぼなく、それでも不自由なく生活ができる「世界」。(ちなみに私は両方とも乗れない…)
“アイスが食べたいな”と思ったら、徒歩3分のところにあるコンビニエンスストアに行って、アイスが食べられる「世界」。
“あの人元気かな”と思ったら、すぐそこにあるスマートフォンを手にとって、ほんの1分程度で”元気?最近どう?”とメッセージを送れる「世界」。
その「世界」は、自分にとって当たり前の「世界」だけど、一歩ひいて見てみると、それはもう、信じられないほどに小さな小さなただの「点」。
その「点」の集合体が、本当の「世界」であることを、あらためて感じている今日この頃です。



そんな私の「点」の中の、さらにひとつの点「新宿」。
私がDJをする場所は、主に、中目黒〜恵比寿/代官山〜渋谷〜原宿〜新宿、といった感じなんだけど(そもそもDJできる場所がこのあたりに多い)、ここ数年は、その中でも「新宿」の凝縮度が高いように思います。
今の「クラブカルチャー」の中心は間違いなく「渋谷」なんだけど、いわゆるダンスフロアを意味する「クラブ」の形だけではない場所が増えているのが、その理由かな。

度肝を抜くキャラクターを持つ文化系の大人たちが集まる、居酒屋風クラブ歌舞伎町「BE-WAVE」、日本が誇るゲイタウンの中心にある、一見さんでもカジュアルに入れる新宿二丁目のオープンカフェ「アラマスカフェ」、じわじわと広がる高架下文化のひとつ、ギャラリーも持つエスニックレストラン「サナギ新宿」、今年は、「NEWoMan|ニュウマン」のポップアップストアでもDJをさせていただきました。

そして明日は、新宿中央公園のすぐそばにできた新しいホテル「ザ ノット 東京新宿」でDJいたします。
いつもお世話になっている橋本徹さん、shunhorikiくん、sakujayくんと、実は一緒の現場ははじめましての最高の夏さん(いやぁ、あらためていいネーミング!)と、午後の15時〜20時まで、チルアウトな時間をお届けします。

後戻りできないんじゃない、ただただ好きだから突っ走ってるだけなんだ!と言わんばかりに、いろんな経験をしたりしなかったりの大人たちが自由に楽しんでいる、バラエティに富んだ場所。
半端者は受け入れてもらえないような雰囲気もするんだけど、何をやっても受け止めてくれる包容力もある。
それが、私にとっての「新宿」です。

ちなみに、北側に「BE-WAVE」、東側に「アラマスカフェ」、南側に「サナギ新宿」、西側に「ザ ノット 東京新宿」ということで、明日で、新宿全方位コンプリートの予感。
新宿中央公園のお散歩がてら、新宿でショッピングがてら、是非、お気軽にお立ち寄りください!



▼Infomation
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TKTS- PARK WEST AFTERNOON -

2018/10/21 sun
at ホテル ザ・ノット東京新宿 / Hotel The KNOT Tokyo Shinjuku[新宿]
OPEN 15:00-20:00
Entrance FREE

DJs:
橋本徹 [SUBURBIA]
最高の夏 [SUNDAY DISCO SESSIONS]
DJ Emerald
Sakujay [LF]
shunhoriki

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9月よりまだ見ぬ新境地 西新宿で始まったTKTS
新宿中央公園の木々の揺らめきを感じながらの週末に音楽を添えて
各様々なミュージックセレクターをお呼びしての第3日曜日
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2018年9月17日月曜日

9月の私は、Twin Peaksと、Friday Loungeと。

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


1ヶ月くらい前から、90年代はじめに大ブレイクしたアメリカのTVドラマ「ツイン・ピークス(Twin Peaks)」に夢中です。
昨年、25年ぶりの時を経て「続編」が公開されたらしいのですが、そんなことはまったく知らず、「何か映画観たいなぁ。(もともと映画を借りるつもりだった)あ、ずっと気になってたツイン・ピークスにしようかな」くらいの軽い気持ちでした。
その日から連日のように、TSUTAYAでDVDを借りては観る、返却してはまた次を借りて続きを観る、の繰り返し。
最近やっと「本編」を終え、「続編」の方へ足を踏み入れたところです。

「本編」を見ているあいだは、街中や電車の中の人たちを「ツイン・ピークス」の配役に当てはめてしまったり、夢の中までもが「ツイン・ピークス」一色になってしまうほどでしたが、9月に入ったくらいでそれもなくなり、少し落ち着いてきました。
(引っ越した先で、新調したカーテンを深めの赤色にしてしまったけど…)

「ツイン・ピークス」は、作品ももちろんですが、サウンドトラックも非常に素晴らしく、暑い夏が終わって涼しくなってきた今のこの気候を美しく彩りつつ、妖艶に絡み合って景色の中へ馴染んでいきます。
現実と夢の狭間にいるような、冷たいような生温かいような…。
ただ、想像するに、おそらく、どの季節にもマッチするんじゃないかな。
だからこそ、当時、世界中で大ブレイクしたんでしょうね。

「ツイン・ピークス」だけではないですが、この90年代初期の頃って、すべての事象の「輪郭」がぼや〜っとしていて、本当に魅力的です。
90年代初期、と敢えて言うのは、その後、デジタル化(ネットワーク化)が急成長することに起因します。
80年代のぼや〜っも大好きなんですが、90年代初期は、特にこの「見えない力」に引っ張られていく過程、という感じが強烈です。
あらゆるところで綱引きをしているみたい(実際には綱じゃないけど、とにかく引っ張り合っている感じ)と言うか、こう、地球全体の時空が少し歪んでいるように見えるというか...。
そんな感覚が私の中にずっとあったのですが、この作品に出会って、それが確かなものになって、すーっと溶け合って、一体化しました。(「ツイン・ピークス」と私がね)

というわけで、「ツイン・ピークス」については、まだ道/未知の途中なので、まだまとまらない部分も多いので、また追って、別の機会に。



そんな80〜90年代のど真ん中に、Aphex Twinのリリースで知られるレーベル《APOLLO》など国内外にて楽曲を発表する、私が心から尊敬する音楽家であり、隠れた映画評論家(と、私が勝手に思っている)でもある巨匠・白石隆之さんと、ネットラジオ《dublab.jp》でのHi-Rayくんの番組で知った音楽家のYAMAANさんを迎えた『Friday Lounge』を、今週金曜日(9月21日)に開催します。







それぞれ個人的にお誘いしたのですが、実は、おふたりは10年ほど前から知り合いだそうで、2011年にYAMAANさんがリリースしたアルバム『12 Seasonal Music』に白石さんがコメントを寄せていた、という奇跡がここでも起きていて、うれしい偶然が続くばかりです。
おふたりが「ツイン・ピークス」を見たかどうかはわからないけど、あの時代ならではの雰囲気や感触みたいなものは、きっと共感していただけるんじゃないかなと、密かに思い描いています。
当日、いろいろお話ししてみたいと思います。

私の担当の『Friday Lounge』は、奇数月の第3金曜日なので、今年も残すところ、あと2回。(『Friday Lounge』についてはこちらからどうぞ)
この日は、いろんな「輪郭」が楽しめる夜になると思います。
秋の夜長に、ぜひ、ゆったりと、揺らめきにいらしてください。
心よりお待ちしております。



▼Infomation
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Friday Lounge

2018/9/21 fri at Café Apres-midi
OPEN / START 20:00
CHARGE: 500YEN

Guest DJ:
白石隆之
YAMAAN

DJ:
maa [Hamon Radio]
DJ Emerald
Toru Hashimoto [SUBURBIA]

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日本初のインディーズ・レーベル《Vanity Records》よりBGM名義で、また、Aphex Twinなどで知られるテクノ名門レーベル《APOLLO》よりPLANETOID名義で、1980年代より国内外問わず楽曲リリースし、圧倒的に研ぎ澄まされた感性と、技術、知識をすべて持ち合わせる白石隆之氏の大変貴重な「非ダンスフロア」でのDJセット。
そして、日本の12ヶ月の季節の情景を表現したアルバム『12 Seasonal Music』で知られる、ヒップホップからアンビエントまでを自由に行き来するトラックメイカーYAMAAN氏のDJセットでお送りします。
“あるべき偶然”が漂い、淡い青色の月が夜空に浮かぶ、9月の第3金曜日へ。
心よりお待ちしております。



about《Friday Lounge -The Third Monday of the month-》
2018年の毎月第3金曜日は、渋谷と原宿のちょうどあいだに位置するビルの5階「Café Apres-midi」にて、maa、Wataru Sakuraba、DJ Emeraldの3人のDJによる「Friday Lounge」を開催しております。



2018年8月4日土曜日

代官山『OFF』オーナーSakaiさんのパーティ《Kompas》at 中目黒solfa

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


先日、坂本龍一さんがお気に入りのレストランの音楽があまりにも酷いため選曲を引き受ける、というニュースがありました。
私も(レストランに限らずですが)あらゆるところで、かなりこの問題にぶちあたります。
「自分だったらああするのになぁ」と思ったことも、数知れず。
だから、この提案をさらりと実現させてしまうこのニュースを知ったとき、変に親近感が沸きつつも、さすが教授だなぁ・・・と心底感心しました。
ほんと、かっこよすぎる。



代官山にある『OFF』は、私のお気に入りのヘアサロン。




photo: OFF


『OFF』は私にとって、偶然見つけた場所なんだけど、たった一度行っただけでお店の雰囲気がものすごく気に入ってしまって、それから数年、今でもずっと通っています。
もちろん、雰囲気だけでなく、技術面とか、従業員の子がみんなチャーミングとか、そういうのも含めて全体的に大好きなんだけど、圧倒的に今までのヘアサロンと違うのが、店内に流れるBGM。
一番印象に残ってるのは、アーサー・ラッセル(Arthur Russell)関連が流れてたこと。(別のアーティストのカバーとかも含めて)
このあいだ行ったときは、ウィル・ロング(Will Long)が流れてたっけ。
そして、『OFF』はビルの最上階にあって、窓も多く、風通しがよくて、移り変わる外の天気とのミラクルが、常に起きてるような感じがします。
毎回、その居心地の良さに、うっとりしてしまいます。
(あと、少し細かいことかもしれないけど、音のボリュームも絶妙)



そんな素敵なBGMを選曲をしているのが、『OFF』のオーナーのSakaiさん。
美容師としてのキャリアだけでなく、DJとしてのキャリアも長いSakaiさんの主催のパーティ《Kompas》が明日、中目黒solfaで開催されます。
メインフロアのゲストには、世界中を飛び回るDJ Sodeyamaさんが出演します。
なんでもおふたりは、20年以上付き合いのあるお友達だというからびっくり。


SakaiさんのInstagramのコメントより引用
=================
彼此22年前くらい、DJとしては僕の中では一番古い友人にあたると思います。
若かりし頃、僕も憧れた世界であり、最も成功するのが難しい世界で常に第一線で活躍し続け、世界を股にかけ、我が道を進んで行く姿は格好良いです。
=================

しかもSodeyamaさんは、ストイックなDJプレイからは想像がつかないフレンドリーさを持ち合わせているのも、素敵なところのひとつです。


そして、ラウンジフロアのゲストには、《Beams Records》の青野賢一さんをお迎えします。
青野さんについては、以前のこちらの記事にも書いたとおり。
いつどんなところでばったり会っても、常に「ハンサムな佇まい」なのには、本当に驚きます。

言うまでもないですが、もちろん、青野さんのDJも大好きです。
今年は、毎月DJMixがアップされるので、すっかり楽しみのひとつになっています。





明日の夜は、是非《Kompas》へ。
最高気温37℃(予報)の日中を越えた後、至上の音楽のシャワーを浴びにいらしてくださいね。




▼Infomation
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2018/8/5(sun) “kompas” at solfa[中目黒]
OPEN / START 18:00
CHARGE: ¥2500/1D

-Room 1-
DJ Sodeyama [ ARPA records / трип ]
Wataru Sakuraba
Sakai [ KOMPAS / parallel ]
Nancy [ KOMPAS ]

-Room 2-
Kenichi Aono [ BEAMS RECORDS ]
TEN
Shunhoriki [ Friday Lounge / i niche ]
DJ Emerald

VJ – Miki Yoshioka

Food – Alice da 食堂

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2018年7月21日土曜日

《ロブスター・テルミン》レーベルショーケース|Lobster Theremin 5 years in Tokyo

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


ロブスター・テルミン〈Lobster Theremin〉。

世界初の電子楽器「テルミン」を演奏するかのように、1本の手が「ロブスター(ウミザリガニ)」を操る、愛おしい手書き風のイラストが特徴のロンドン発のこのレーベルは、傘下に〈Mörk〉〈Distant Hawaii〉〈Tidy Bedroom〉という3つのレーベルも持ち、2017年にはレコードショップまでオープンし、ここ数年、ものすごい勢いで拡張し続けている。

また、流通(ディストリビューター)としてのセンスもとっても素晴らしく、数え切れないほどの楽曲を世にリリースしていて、そのファンも世界中に数多く存在する。
私もどちらかというとそのクチで、楽曲を買ったあとで「あ、これロブスター・テルミンがディストリビュートしてるんだ」と知ることがたまにある。

先日、《Pioneer DJ Radio》に提供させていただいたDJmixの序盤で流れるAquatic Languageの「Départ」という楽曲も、Lobster Distributionシリーズのひとつ。
また、中盤で流れるBlair Sound Designの「Overheated」という楽曲は、Lobster Thereminからリリースされているもの。
「星のカービィ」の音がサンプリングされてて、つい顔がにやけちゃう。








基本的にダンスミュージックがメインで、その中でもハウスが一番の軸にはなっているんだけど、ロブスター・テルミンの最高の強みは何と言っても「曲者なのに、どこか人懐っこさがあるところ」に尽きると思う。
楽曲ももちろん、アートワークも含めて、「マニアックな要素」と「キャッチーな要素」のバランスがとにかく絶妙。
あと、このレーベルロゴがそうであるように、「こんなレーベル」と簡単に言いあらわせないところがまた魅惑的でとてもよい。
「なんだろう?」と思うことからすべてがはじまることを忘れてしまう大人になんて、絶対になりたくないもの。

そんなロブスター・テルミンのレーベル設立5周年を記念して、今夜、渋谷Circus Tokyoにて、初来日となるレーベルのボスであるAsquithと看板アーティストのRoute 8を迎え、盛大にお祝いしたいと思います。
いやー、楽しみ。






ちなみに、ロブスターを捕まえる夢を見るのは、いいことが起こる兆しみたい。
信じるか信じないかは、あなた次第だけど。



▼Infomation
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ロンドン発、次世代ハウスシーンをにぎやかす才人を多く発掘するLobster Theremin(ロブスターテルミン)。今年で設立5周年を迎える新興レーベルのボスであるAsquithと看板アーティストのRoute 8が一挙初来日、レーベルショーケースが開催!


LOBSTER THEREMIN 5YEARS IN TOKYO
2018.7.21(SAT) OPEN: 23:00

LINE UP:
-B1 FLOOR-
Asquith (Lobster Theremin)
Route 8 (Lobster Theremin / Nous)
Romy Mats (解体新書 / N.O.S.)

-1st FLOOR-
Sayuri  
DJ Emerald
DJ Razz
T4CKY 

DOOR: 3,000yen
ADV: 2,500yen

TICKETS on RA, Peatix

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Asquith (Lobster Theremin / from London)
ロンドン発、新興レーベル兼ディストリビューターとして近年めきめきと勢いをみせるLobster Theremin(ロブスターテルミン)。そのレーベルボスであるJimmy Asquithは、2013年にレーベルLobster Thereminを設立。Lobster Theremin傘下に3つのレーベル、Mörk、Distant Hawaii、Tidy Bedroomも始動し、また、エレクトロミュージックシーンではグローバルに知られるディストリビューターである。2017年1月にはハックニーにレコードショップ実店舗もオープンさせた。
ロンドンのCorsica Studiosでのパーティー"FIND ME IN THE DARK”は毎回ソールドアウトになるほどの人気ぶりで、Asquithは常に新しい才能をサポートし、Discwoman、Workshop、Antinoteなどとのコラボレーションも行なっている。
海外ツアーをこなしながらも、Rinse FMでレギュラーを担当し、Tom HangやChicago Flotation Deviceといったアーティスト名義でリリースを重ねている。2017年12月にTom Hang名義でのデビューアルバム『To Be Held In A Non Position』をリリース。
今年でレーベル設立5周年を迎え、ロブスター・テルミンのレーベルショーケースとしてのツアーを展開している。
Jimmy Asquith founded the well-renowned label Lobster Theremin in 2013. Since then the label boss has established three imprints including; Mörk, Distant Hawaii and Tidy Bedroom, as well as a respected distribution service used widely within the electronic music scene, and a physical record shop based in Hackney, East London.

Alongside the label, Asquith continues to sell out his Corsica Studios based night Find Me In The Dark, which champions emerging talents and sees collaborations with the likes of Discwoman, Workshop and Antinote. DJing internationally, Asquith simultaneously is producing and performing under multiples aliases all whilst holding down a regular Rinse slot.

On top of that, Asquith’s personal and ambiguous ambient alias, Tom Hang, will be releasing his debut album this December following a heart-wrenching Cafe Oto performance. Part ambient, drone, noise and a tapestry of clouded, intermingling emotions, ‘To Be Held In A Non Position’ is a three-and-a-half year release from stasis; an exhale from a long-held breathe; a shallow sleeper now awake.

On a DJ tip, increased gigs have led to a stylistic shift, a move back to UK-oriented sounds blended with old-school US influences and plenty of new names and talent littered throughout the set lists, alongside occasional older selected digs from the garage-house trove.

The start of 2018 will see a solo Asquith jaunt of North America as well as a Lobster Theremin debut showcase at Motion on January 20th, kicking off the 5 Years of Lobster Theremin European tour.
https://lobstertheremin.com/

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Route 8 (Lobster Theremin / Nous)
ハンガリー、ブダペストのDJ/プロデューサー、Route 8。Lobster ThereminやNousからのリリースによって、その名を知られるようになったが、ハードウェアを使っての音楽制作とその探求は10年以上前から始めている。USのロウなハウスやテクノからインスパイアされた、メランコリックなメロディーと巻き込むようなドラムパターンで、エレクトロやアンビエントまで拡大解釈できるオリジナルなサウンドを追求している。DJ CidermanやQ3Aという名義でも知られる。
Route 8 has only recently gained prominence through the Lobster Theremin and Nous labels, but his hardware production experiments date back almost 10 years. Inspired by the raw-edged US house and techno sound, he has also expanded his work into off-kilter electro and ambient, still inflicted with his melancholia-tinged melodies and ratcheting drum patterns.
https://soundcloud.com/route8


*Photo ID required.
*You must be over 18 to enter.
*No re-entry.
*Please do not bring food and drink.

■CIRCUS Tokyo
3-26-16, Shibuya, Shibuya-ku, Tokyo 150-0002 Japan
+81-(0)3-6419-7520
info@circus-tokyo.jp

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2018年7月19日木曜日

《Friday Lounge》at 渋谷カフェ・アプレミディ|You Forgot&Nariを迎えて

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


今年の《Friday Lounge》も、早いものでもう折り返し。

後半は、7月、9月、11月の第3金曜日を担当します。(前半は偶数月だったのです)
7月の開催は、もう明日。そう、もう明日。

ゲストには、まず、神様みたいな、妖精みたいな存在のYou Forgotくん。


彼とはじめて会ったのはいつだったか…(忘却…これは私の特技…)なんだけど、とにかく印象的なのが、去年の6月、Mr.G来日公演の時のContact Tokyoのセカンドフロア(CONTACT)。
私の次がYouくんで、Crue-L Grand Orchestraの「(You Are) More Than Paradise (Theo Parrish Translation Long Version 1)」(たしか、こっちのバージョンだったはず)に、レコードの針を落としてパスをしたその後。
彼のロングミックスの華麗さに、同じブースの中で惚れ惚れしたあの光景。これが、ひとつめ。
もうひとつは、さらにそのまま続いた朝までの時間、ぜんぶ。
真裏のメインフロア(STUDIO X)での、Ryosukeさんのプレイも体験しつつだったから、途切れ途切れにはなっちゃったけど、あの日、Youくんが書き上げたひとつの短編小説みたいな空間は、特別なものだった。
(音が止まった後、思わず興奮気味にYouくんに感想を伝えてた記憶あり。これは覚えてる。)





そして、もう一人のゲストは、近年、人気急上昇中のハウス・ミュージック・コレクティブ《CYK》から、Nariくん。



《CYK》を構成する他のメンバーは、Kotsuくん、DJ No Guaranteeこと平井くん、Naoki Takebayashiくん。
全員がDJで、宣伝部長で、クラウドであるこの集団は、今のクラブシーン(「ハウス」を軸にしていろいろな場所)をかき回す、エネルギーに溢れたコミュニティ。
それぞれにセンスがないと成立しないことはもちろんなんだけど、それ以前に、ひとりずつのキャラクターがはっきりしてるのもあって、The Beatlesみたいだな、とひっそり思っていたり。
Nariくんがポール、Kotsuくんがジョン、平井くんがジョージで、竹林くんがリンゴであることは、誰の目から見ても明らかでしょう。

天才バカボンの作者、赤塚不二夫先生がこんなことを言ってた。
「どんな映画も、”若い時”に見なくちゃダメなんだ」と。
“若い時”にしか「感じられないこと」がある、ということだと思うんだけど、彼らの活動を見ていると、それがすごくいい形で映し出されていて、爽快な気分になる。

Nariくんとの出会いも、去年のContact Tokyo、Leon Vynehallの来日公演のとき。
私の前にプレイをしてたんだけど、現場を冷静に見て、雰囲気をコントロールしていたのをよく覚えてる。
彼のその"さりげなさ"は目を見張るものがあって、存在感を出すこともできるし、消すこともできる、魔法使いみたいなDJだなと思う。




というわけで、「聴いてよし」「踊ってよし」のバランスがとれたDJお二方を迎えた、7月の第3金曜日の《Friday Lounge》は明日です。
どうぞお楽しみに!



▼Infomation
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Friday Lounge

2018/7/20 fri at Café Apres-midi
OPEN / START 20:00
CHARGE: FREE

Guest DJ:
You Forgot [UGFY]
Nari [CYK]

DJ:
maa [Hamon Radio]
DJ Emerald
Toru Hashimoto [SUBURBIA]

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抜群のバランス感覚と繊細な審美眼で、一瞬たりともフロアの空気を取り逃がすことなく、フロアを愛でるようにプレイするDJ/You Forgotと、次世代のハウスシーンをリードするコレクティブ《CYK》に所属し、今年、世界基準の野外パーティ《rural》への2度目の出演も決定しているDJ/Nariを迎えて。
ダンスフロアの出演がメインの彼らが作り上げる「セカンドフロア」に、この上ない期待が高まる、貴重な第3金曜日の夜へ。
どうぞお気軽にお越しください。



《Friday Lounge -The third Monday of the month-》
2018年の毎月第3金曜日は、渋谷と原宿のちょうどあいだに位置するビルの5階「Café Apres-midi」にて、maa、Wataru Sakuraba、DJ Emeraldの3人のDJによる「Friday Lounge」を開催しております。


2018年6月5日火曜日

東京湾の上で|Jicoo The Floating Bar

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。



今週末の土曜日は、「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」でおなじみの漫画家・松本零士さんのデザインした船『Jicoo The Floating Bar』にて、ミュージックセレクターとして出演します。
『Jicoo』は、東京湾に浮かぶ、船上バー。
七色に光る宇宙船の船内からは、海抜0メートルの動く東京湾の夜景を楽しむことができます。
『Jicoo』でしか体感することのできない、幻想的な、非日常空間。
柔らかな波の揺らぎと、心地よい音楽で、体だけでなく、心ごと、うっとりしにいらしてください。





『Jicoo』といえば、ちょうど3年前の6月5日、ロサンゼルスの音楽プロデューサー、Leechの来日公演を行った際、会場のひとつして利用させていただきました。



LeechことBrianは、エレクトロニックミュージックを軸にして、長年、演奏はもちろん、アレンジやエディットなど幅広く活動している大ベテラン。


LEECH - TUSKS teaser from 100% Silk on Vimeo.


来日公演の「主役」はもちろん、来日する張本人なんですが、全5公演のうち1公演は「日本の文化を体感してもらうこと」をテーマにして、「雅楽」とのコラボレーションを企画しました。
前例のない、まったく想像できない異空間。
それが実現できるのは、『Jicoo』以外に考えられませんでした。


雅楽の演奏をお願いしたのは、「篳篥(ひちりき)」という小さな縦笛のような楽器の演奏者、三浦元則くん。
東京藝術大学非常勤講師も務めています。



「笙(しょう)」の演奏者である三浦はなちゃんと、龍笛(りゅうてき)の演奏者である纐纈拓也くんを率いて、雨が降る東京湾の船上という別世界を、さらに上回る特別な異空間へと、みんなを連れ出してくれました。
船内にいる人たち全員が、雅楽特有の洗練された音の重なりに、ゆっくり手を差し伸べるように、意識をすーっと集中させて、聴き入っていました。



雅楽の演奏の後は、LeechのDJセットがスタート。
余韻を残しつつも、徐々にパーティモードへ持って行く彼のプレイは、さすがの一言。圧巻でした。
いつの間にか、船内の真ん中で、ダンスをする人たち。
その中に、さっき篳篥を演奏していた元則くんが登場。(和装から洋服へ早着替え)
ハウスダンスを、とにかく軽快に、楽しそうに、自由に踊る踊る。

雅楽のグルーヴ(って言っていいのかわからないけど)と、ハウスのグルーヴの両方を持ってる人なんて、他にいるのかしら?
どっちの元則くんもものすごくかっこよくて、人柄もとても魅力的で、一緒にいてとても居心地がよくて。(当時、事前打ち合わせのために焼肉屋さんに行ったときも、ついつい長居した記憶…)
彼に会うたびにいつも、「素敵な人だなあ…」と、心惹かれる自分がいます。
そして、世界最古のオーケストラとも言われ、無形文化遺産でもある日本が誇る伝統音楽でありながら、現代の日本の中では馴染みのない雅楽の世界へ、さりげなくエスコートしてくれる彼に、心から感謝します。

本当にこの日は、奇跡の夜、としか言いようのない、素晴らしい一夜でした。




この日以外にも、『Jicoo』の思い出はいくつかありますが、続きは船の上でお話ししましょう。;)




▼Information
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2018.6.9(土)
at Jicoo The Floating Bar[東京湾上]
18:30-23:00

■Artist
MUSIC SELECTOR
Emerald, Chloé Juliette, methyl., Ryota Uehara, Takahiro Haraguchi

■Departure time
日の出桟橋 / Hinode Pier | 19:00 20:00 21:00 22:00
お台場海浜公園 / Odaiba Seaside Park | 20:30 21:30 22:30

■Charge
2,600yen
*料金にはフローティングパス・消費税が含まれます

■Access





2018年4月23日月曜日

《designsix LONDON》ポップアップストア at 新宿NEWoMan|ニュウマン

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。




新宿『NEWoMan』の1階、ロンドン生まれのアクセサリー《designsix LONDON》の期間限定のポップアップストアで、DJ/ミュージックセレクターを担当します。
ロンドンでは「ヴィクトリア&アルバート博物館」や「テートモダン」など、日本国内では「原美術館」や「21世紀美術館」、「MoMA DESIGN SOTRE」などに並んでいる、トレイシー・ワトソンによるかわいらしいデザインのアクセサリーたちに囲まれて。


《designsix LONDON》のアイテムは、植物を連想させるようなものもあれば、無機質でつるんとしたものもあったり、色味も、形も、質感も、ひとつずつすべて違っていて、自分のお気に入りを見つけるのが楽しくなる。
そして、お手軽な値段なのもうれしい限り。
また、「SPRiNG」「リンネル」などのファッション誌やCMなどの広告でも活躍中の人気モデル・Kanocoさんとのコラボレーションアイテムも先行販売。



彼女のブログからも《designsix LONDON》への愛情がとてもよく伝わってきます。


私がDJを担当するのは、4月29日(日)の15時〜18時頃。
ブルーボトルコーヒーの隣のスペースで、どなたでもお立ち寄りいただけます。
ちょうど2年前に行ったロンドンへ想いを馳せつつ、アクセサリーを手に取ったときと同じように、思わず心がワクワクするような空間を演出できたらと思います。

今日、ひとつリングを買ったけど、まだまだ気になるアイテムがあるので、それはまた当日選ぼうっと。
本当に、いくつもいくつも欲しくなっちゃう。困った!:)


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『designsix LONDON』POP-UP STORE

期間:2018年4月9日(月)〜5月7日(月)
会場:NEWoMan SHINJUKU 1F/lab.


▼designsix LONDON
WEBサイト:http://www.designsix.jp
Instagram:https://www.instagram.com/designsix/
Twitter:https://twitter.com/designsix
Facebook:https://www.facebook.com/designsix

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ちなみに、京都の祇園町(八坂神社付近)には、《designsix LONDON》のスタンドカフェ&バー/コンセプトショップ《standsix/GATHER out of time》があるそう。
アイテムがあるのはもちろんのこと、店内にターンテーブルと真空管ミキサーがあるみたいで、雰囲気もとてもよさそう。
今度、京都に行くときは寄ってみよう。:)

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▼standsix/GATHER out of time
WEBサイト:http://www.gather-outoftime.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/gatheroutoftime/
Facebook:https://www.facebook.com/gatheroutoftime

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「ロンドン」から連想する曲を選ぶには、「ロンドン」は、あまりにも有名すぎる。
ただ、単純に「ロンドン」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶのはこの曲。
歌っている女性は、ブラジル/サンパウロのシンガーソングライター・シベーリ(Cibelle)。
2006年に発売された『The Shine Of Dried Electric Leaves(邦題:デンキ仕掛ケノ枯葉) 』というアルバムに収録されています。
当時、ブラジル音楽に興味があって、このアルバムはよく聴いてたなぁ。
原曲は、彼女も(私も)尊敬する、ブラジル音楽界の巨匠、カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)によるもの。

––––––––ロンドンをひとり歩き回る私は、何かを恐れることもなく、孤独をマイペースに楽しんでいる。それなりに幸せなことや悲しいことがある中で、私の瞳は、空飛ぶ円盤を探している...。

歌詞は、こんな感じかな。
この地に足つかない雰囲気がたまらないよね。


"London, London" video by Cibelle feat. Devendra Banhart

Caetano Veloso  - London London

2018年4月14日土曜日

アルヴィン・ルシエ、「音楽」と「言葉」の境界線

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。




先週、アルヴィン・ルシエ(Alvin Lucier)のライブに行ってきた。
「音楽家」という言葉ひとつでは、表現しがたい彼の存在。
エヴァー・プレゼント・オーケストラ(Ever Present Orchestra)を率いてのそのパフォーマンスは、今までに体感したことのない、未知の領域そのものだった。
「前衛的」とか「反発」といった、ただ固定概念をぶっ壊すようなものではなく、すべてをひとつずつ解体し、それらを丁寧に再構築し、時間軸を超えたスピードで、ものすごくゆっくりと(厳密に言うと「ゆっくり」なはずなのに過ぎていく時間はあっという間、という不思議な感覚)私たちの目の前で繰り広げられた。
それは「表現」ではなく、「会話」であり「問いかけ」だった。
会場にいる人たちは意識を集中させ、ルシエの提示を見逃さないように、聞き逃さないように、感じ損ねないように、注意深く凝視していた。(中には目を閉じている人もいたけど)
あの時、流れていた時間こそが、私たちの『本質』であると、確信した。







私たちは、生まれてきたときは、すべてのものが「新しい」。
見るもの、聞くもの、感じるもの。
とにかく、全部が「はじめて」だから当然だ。
ただ、時間が経過とともに経験を重ねていくので、その「新しい」感覚は必然的に減っていく。
あらゆるものに、慣れていく。
そうすると、いつの間にか、あらゆるものの「境界線」が曖昧になっていき、溶け込んでいってしまう。
すべてのことが「当たり前」になってしまう。
「当たり前」のことなんて、本当は何ひとつ、ないのにね。







人間は、「分ける」生き物だ。
国も、料理も、色も、病気も、罪も、思想も、植物も、性別も、感覚も、何もかも。
物事は分けられ、整理され、それぞれに名前がついている。
それ自体が悪ではないし、整理をするために必要なのはとてもよく理解できるし、恩恵もたくさん受けているとも思う。
ただ、それに固執しすぎたり、「分けること」が目的になったり、「分けたもの」の奪い合いやそれによる争いが生まれたりするのは、まったくもって『本質』ではない。
目安として「分けたもの」が、武器になってしまうなんて。
「分けたこと」によって、誰かが不幸になってしまうなんて。
もう、本当に、心が傷むばかり。







私は、「音楽」と「言葉」には厳密な境界線はない、と感じていたことを原動力にして、このブログを始めた。
「1+1=2」というような、数学的なこととは真逆のベクトルだ。
はっきりとした答えがあったとしても、それはすぐに、消えていくかもしれない。
ただ、そこになにかしらの「ヒント」や「きっかけ」や「ひらめき」があればいいなと、毎日、毎時、毎分、毎秒、想いを馳せている。

2018年4月7日土曜日

豪徳寺近くの『バレアリック飲食店』と、インターネット・ラジオ《Hamon Radio》

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。




嵐が過ぎ去った今日の夜は、豪徳寺そばにある『バレアリック飲食店』にてDJします。

『バレアリック飲食店』は、ごはんもお酒もスイートもほんっとうに美味しいのはもちろん、写真からもわかるように、植物がたくさんあって、雰囲気もよく、居心地がよい。
でも、おしゃれすぎて敷居が高い"あの感じ"もなく、まるで海外にいるような"あの感じ"ともまた違う。
すべてが「ちょうどいい」感じなんです。
何度も何度も行きたくなる、大好きなお店のひとつです。



『バレアリック飲食店』オーナーの快くんのインタビューはこちら


そして今回は、最近ローンチしたばかりのインターネット・ラジオ《Hamon Radio》とのコラボレーション。

現場だけでなく、YouTubeからもリアルタイムでご覧になれます。
《Hamon Radio》の情報がまとまっているTumblrはこちら


世界中へ発信するためにサイト内は英語表記が多いですが、簡単に訳すとこんな感じかな。

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「Hamon Radio」は、世界中の人々が共有しコミュニケートする「第三の場所」。
「Hamon」は、日本語の「波紋」のこと。
水面は、水滴が落ちるとゆっくりと波紋が広がっていき、次第に大きな影響を受けます。
私たちは、「Hamon Radio」がこの最初の水滴のようなものになれることを願っています。
====================================

今夜は、その《Hamon Radio》のサウンド・ディレクターの二人と共に、ゆったりとした、リラックスできる空間が作れたらと思います。
そして、その空間がインターネットを通じて、世界中に広がっていくこともイメージしながら。
私たち人間が生み出したインターネットの世界は、本来、こういう風につかわれるべきよね、と、心底思う、昼下がり。

では、また後ほど。:)




▼information
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"Balearic Restaurant w/ Hamon Radio"

2018/4/7(土)
at バレアリック飲食店[豪徳寺]
START 19:00-
Entrance: FREE(店内でのご注文は別途お願いいたします)

-DJ-
Tatsuya Ouchi (Hamon Radio)
maa (Hamon Radio)
DJ Emerald

『バレアリック飲食店』より中継生放送。
YouTubeでご覧になれます。
YouTube URL:https://goo.gl/WFDpAb

Broadcast schedule (JST):
19:00 ~ : Tatsuya Ouchi
20:00 ~ : DJ Emerald
21:00 ~ : maa

2018年3月10日土曜日

西麻布Bullet’sの閉店と、私の想いと。

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


今から11年前の、2007年。
初代iPhoneが発売された頃。

西麻布の『Bullet’s』にはじめて訪れたのは、蓮沼執太さんなどが出演していた《CMFLG》という、delaさん主催のイヴェント。
六本木の喧騒から少し離れた地下室で、靴を脱いで、赤い絨毯やキングサイズのベッドの上で、座ったり転がったりしながら、音楽を聴いて、お酒を飲んで、友達とおしゃべりして。


バーカウンターの中にいるのは、『Bullet’s』のオーナーのHarryさん。
美人で、ユニークで、優しくて、エキゾチックで、人を惹きつけるエネルギーに満ち溢れた、とても魅力的な人。
私は、もう、一瞬で、この場所が気に入ってしまった。



2008年、私が「DJ」と無縁だった頃。
その『Bullet’s』で音楽、お芝居、ヘアメイクブースなどを取り入れながら、自分が今まで体感したことのないイヴェントを主催して、いろいろチャレンジさせてもらった。

2010年、私が手探りで「DJ」をはじめた頃。
「ソフィア・コッポラ」「バンドTシャツ」「宇多田ヒカル」「多幸感」「星座」など、コンセプチュアルなDJイベントを、思いつくままに開催させてもらった。(こう並べてみると、本当にとりとめないね。)
その中でも、ピコピコさんは、強烈過ぎる思い出のひとつ。
いわゆる私が用意したサプライズだったんだけど、自分自身も「ベッコスくん」の登場の瞬間まで、ずーっとドキドキしてた。


同じ日に出演いただいた”大人”紙芝居師の飯田華子さんも、『Bullet’s』の持つ妖艶さを、独特な雰囲気で十二分に引き出していた。

2012年、私が「ハウスミュージック」に惹かれるようになった頃。
《100%silk》というL.Aのレーベルがきっかけで聴き始めたその音楽は、自分が聴いてきた楽曲や触れてきた視覚的感覚と地つづきなのに、今までとは明らかに違った新しい世界観があって、とにかく、好きで好きで仕方がなかった。こんなことってあるんだなぁって、自分でもびっくりしたくらい。
そんな中、《100%silk》からオーストラリアのミュージシャン・Roland Tingsが来日することが決まり、そのギグを『Bullet’s』で行った。
この日がまた、私にとって最高の夜だった。





自分の好きなものだけに囲まれた「私だけの秘密の部屋」という感じがして、気持ちがものすごく高ぶっていたのを、今でも鮮明に覚えている。
あと、このイベントの前日、『eleven』で行われたDJ HARVEYと瀧見憲司さんの二人会が夢のような一夜だったこともあって、イベントの前半、ずっと二日酔いだったことも…。




たまに行く『Bullet’s』は、私にとって「非日常」そのものだった。
その「非日常」に、「日常」が混ざり合ったのは、同年、自分のイヴェント《Synthesmic》を、定期的に開催するようになってから。
「シンセサイザー(Synthesizer)」と「宇宙(Cosmic)」をテーマにした《Synthesmic》は、その名前の通りで、それ以上でも、それ以下でもない。
ただ、そのコンセプトに沿って、できることは何でもしたかった。
無重力、とまではいかなくとも、なるべく抵抗力のない、フラットな状態でありたいと、常に思っていた。

シンプルに、このコンセプトに共感してくれた出演者のみなさんと、会場に足を運んでくれたみなさんとで作り上げたのはもちろんのこと、Feldermelder、Twigs & Yarnなど、海外アーティストの来日公演として開催することもあったし、「音楽」だけに絞るつもりもなかったので、「宇宙」に関わる本を読み放題にしてみたり、「宇宙マッサージ」のプリミ恥部さんに参加していただいたり、「宇宙カレー」にごはんをお願いしてみたり。
ダンサーのMELONちゃんには、「女性」としての宇宙を表現してもらって、すごくうっとりするものだったし、年4回の季節ごとの準レギュラーだった、ほそかわゆみちゃんが所属するアヴァンギャルド・テクノ・ポップ・バンド「動く指」は、毎回、摩訶不思議で、地に足つかないとことんキュートなライブだった。
オンライン上(Soundcloud)のメッセージで、カタコトな英語で頑張ってやりとりしてた、ブルックリンから来たDJが、日本語ペラペラの日本人だったり(asyl cahierとSlyAngleの悪戯…)、悪ふざけが過ぎたYoshinori Hayashiくんは、私の新品のレコード針でスクラッチしまくり、終了時間になってもなかなか終わらないし(個人的にはずっと聴いていたいんだけど!)、多忙を極める長州ちからくんは寸前でWブックギングが発覚したり。(それでも憎めない彼の存在は最強)

《Synthesmic》のことは、書き出したら本当にキリがないけど、一夜ごと、それぞれのドラマがあって、それらすべてが愛おしい。
3年間、全部で37回、毎月続けてこれたのは、関わってくれたみなさんのおかげ。
あらためて、感謝の気持ちでいっぱいです。どうもありがとう。



これらの自分主催のイヴェントと並行して、オーナーのHarryさんは、他のイヴェントへの出演のオファーもしてくれて、たくさんの出会いを提供してくれた。
しかも、お誘いをしてくれたイヴェントすべてが、私にとって本当に実りになるものばかりだった。
その中でも、忘れられないのが2011年2月に行われた「My Bloody Valentine Night」通称「マイブラナイト」。



まだ「DJ Emerald」という名前もなく、ほぼ身内ノリのイヴェントでしかDJをしたことがなかった私に、「出てみない?」と声をかけてくれた。
緊張しながら当日を迎えて、知り合いもほとんどいない中で、自分が用意した音源を持ってDJブースに近づいていく。
私の前のDJは、くねくね体をうごかしながら、エフェクターを使いつつ、シューゲーザーの輪郭のない美しさを増幅させていって、とにかく最高にかっこよかった。
会場もすごい盛り上がっていて、「この後やりづらいなあ…」と思いつつ、準備をしていると「次の曲で渡すね」とそのDJから声がかかった。
そして、彼が最後にかけた曲が、Célineの『Un Rêve』。



私が今日、メインの曲としてかけようと思っていた曲だった。
急に頭が真っ白になってしまって、どうしようどうしようと慌てつつ、でも、私は「今日絶対この曲をかける」と心に決めていたので、ここぞ!というタイミングで、かけてみた。(4曲目くらいだったかな)
すると、「いいね〜」「何度聴いてもいいわ〜」とDJブース越しに、そのDJの彼も含め、何人かが声をかけてくれた。
その時、私の目に映った光景は、今でも昨日のことのように脳裏に焼き付いている。

私のプレイが終わった後、「DJよかったよ〜」と声をかけてくれたのは、さっきのDJ。
あなたのDJは素晴らしかったと伝えると、「ただの酔っ払いだけどね〜」と柔らかい口調で謙遜していた。かぶってしまった『Un Rêve』の話もしつつ、相変わらずくねくねしながら、また一緒にDJやりましょう、と言いながら、名前を交換。
彼の名は、hitch(ひっち)。
漫画の中から飛び出してきたような、すごく親しみのあるキャラクターの彼のおかげで、その後、すごいスピードでたくさんの人とのつながりができて、DJをする機会が増えていった。
そして、Harryさんからは、毎年バレンタイン近くになると、この「マイブラナイト」のDJオファーをいただけて、すごくうれしかった。
2013年の回は、My Bloody Valentineのドラマー、Colm O Ciosoig(コルム・オコーサク)が現れて、みんな驚いてたっけ。




私が出演するイヴェント以外のラインナップも含めて、Harryさんの、ひとつひとつのイヴェントに対しての情熱は、とにかく驚異的だなといつも感じていた。
聴いたことのない音、形容しがたい表現、他の場所では会えないような人、すべてが集まる空間が、いつもそこにあった。
2014年5月に行われた『Bullet’s』の15周年イヴェントでは、信じられないほど間近で、細野晴臣さんのライブも体感。


まさに、「日常」と「非日常」のちょうど真ん中くらい。
左うでの夢…は、教授のアルバムだけど、細野さんがギターを弾きながら歌う姿は、本当、夢のような時間だった。




私は、小さい頃からずっと、「歌」と「メロディ」と「キー(調)」と「質感」を軸に、音楽を聴いてきたように思う。
「歌」には、「言葉(歌詞)」がある。
「メロディ」と「キー(調)」には、「記号」がある。(CとかFとか。♯とか♭とか。)
ただ、「質感」には、明確な区分はない。
その曖昧さが「自分だけのもの」であり、「好み」であり、「オリジナル」であり、「センス」なんだと思う。

2012年以降、「DJ」をやりはじめるようになってからは、自分の知らない世界が徐々に見えてくるようになった。
「BPM」(テンポ)とか「ビットレート」(音質)が、数値として日常的に取り上げられていたり(今思えば、ピアノの楽譜の右上にあった「♩=120」がテンポ=BPMだったのか…)、自分が把握している「ジャンル」は、12色入りの色鉛筆のようなものだと知ったり。(「ロック」「パンク」「メタル」「クラシック」「ボサノヴァ」…)
一般的かどうかという視点で、認知度の差はあれど、数え切れないほどの「ジャンル」が存在していることが、とにかく、一番、衝撃的だった。


正直なところ、「ジャンルなんて」と思っていたこともあったし、自分だけの「質感」が「ジャンル」に取って代わられてしまうのではないか、という不安もあったけど、「ジャンル」を経由した後の音楽の聴こえ方は、明らかに、今までに体感したことのない感覚だった。
あまりいい表現ではないかもしれないけど、"心だけで聴かずに、頭も使って聴く"という感じ。
「メロディライン」や「コードの展開」ばかり聴いていた私は、「ベースライン」「リズム/ビート」の方にも、意識が向くようになった。
昔、自分が聴いていた曲をあらためて聴くと、「あれ、バランス悪くない?」とツッコミをいれたくなるようなものもあったりした。
一方で、全体の雰囲気として好きだった曲なんかは、粒度が前よりも細かく聴こえるようになったために、心と頭のバランスが上手にとれなくなることもあった。

「見える景色」は広く、深く、拡張していったことは間違いないのだけど、以前の「狭さ」「浅さ」も気に入っていた自分がいることに気がついてしまって、「ピュアだった頃には、もう戻れないんだ...」という悲しみが大きくなりすぎたこともあった。(なんて繊細な私なんでしょう)
あらためて、今思うと、このバランスがとれた「DJ」こそが、私の理想なんだと思う。




『Bullet’s』は、私にとって、あの頃のピュアな気持ちに戻れる場所。
そして、今の私が「見える景色」を自由に行き来しながら音楽を聴くことができるのは、『Bullet’s』があったから。
もし、『Bullet’s』がなかったら、「DJ Emerald」は存在しなかった。
「DJ Emerald」が存在しなかったら、今、私の周りにいる人たちには、出会えなかった。
それが「必然」だろうが「偶然」だろうが、正直なところ、どっちでもいい。
ただただ、今の自分を包み込む「すべて」が"存在しない状態"は、とてもじゃないけど考えられない。
本当に大切なものは、お金で買えたり、数字で見えたりするものじゃないな、とあらためて感じる。


そんな、私の生みの親のような『Bullet’s』が、2018年3月31日をもって閉店ということで、今までの「すべて」に、感謝の気持ちを込めて、3月29日の木曜日、『Bullet’s』で《Synthesmic》を開催します。



Sputniko!(スプツニ子)さんは、東京ではじめてライブをしたのが『Bullet’s』だったようで、Instagramで、彼女の想いのこもったポストを投稿していました。


"私の青春がなくなっちゃうみたい"な感覚は、私もまったく同じ。
そして、"私の大事な思い出はなくならない"のも、まったく、同じ。
彼女は、『Bullet’s』の本当の最終日、3月31日(土)のラストパーティ《BULLET’S FINAL __ DAY❷》に出演する。
他にも、宇川直宏さん、小林径さん、HiBiKi MaMeShiBaさんなど、豪華かつ『Bullet's』にゆかりのある出演者ばかりで楽しみ。



当日は、「歌」も「メロディ」も「キー(調)」も「質感」も「BPM」も「ビットレート」も「ジャンル」も、すべて取っ払って、たったひとつの「想い」だけで、DJをしたいと思います。
最後の『Bullet’s』、最後の《Synthesmic》で、お逢いできたらうれしいです。


▼Infomation
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"Synthesmic #38"

2018/3/29(木)
at Bullet’s [西麻布]
OPEN/START 19:00-
Entrance: 1500yen
宇宙の本読み放題 / All you can read cosmic books

-LIVE-
ELLEH

-DJ-
pAradice [LIFE FORCE]
Kotsu [CYK]
Wataru Sakuraba
DJ Emerald

-紙芝居-
matocotoshuco


/./././././././././././././././

Synthesizer × Cosmic = Synthesmic

/./././././././././././././././


Synthesmic :::
https://synthesmic.tumblr.com/

Photo Archive :::
https://synthesmic-photoz.tumblr.com/
https://www.instagram.com/explore/tags/synthesmic/

Bullet’s :::
http://bul-lets.com/





2018年2月17日土曜日

秩序ある混沌 [chaotic order] の中で

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


秩序ある混沌 [chaotic order] の中で、今夜も、心を揺らします。
アンビエンス、サイケデリア、白昼夢。
私は、深夜の1時40分から。
フォース・アクセルならぬ、最大4曲同時再生を狙います。

踊る/踊らない、の争点に違和感はあるけど、世界中が注目した、氷の上でのパフォーマンスに感動するのと同じように、人は、いつの時代も、「感じること」を避けては通れない。
なぜなら、「感じること」が、生きることだから。

“誰か”が作ったものに囲まれている現代だからこそ、
内包されているものと向き合い続けることを忘れないように。
それを問われているのが、2000年代以降なんだろうなと、思う今日この頃。

心の奥の、ものすごく奥の方で、感じることができる空間へ。
今夜、神宮前の《Bar bonobo》でお待ちしております。

*ちなみに「秩序ある混沌」は、ノーベル物理学賞の江崎玲於奈さんの言葉です。



▼Infomation
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L.F.

2018/2/17 sat at bar bonobo[原宿/神宮前]
START: 22:00
CHARGE: 1,500yen(with 1drink)

-MAIN FLOOR DJ-
Kaoru Inoue (SEEDS AND GROUND)
Sisi (Rainbow Disco Club / Timothy Really / mule musiq)
ichiya (DecaDance)
Wataru Sakuraba
haraguchic (FreedomSunset)

-2ND FLOOR DJ-
maa (Hamon Radio)
DJ Emerald
Tatsuya Ouchi (Friday Lounge)
OKAYAMA (oshiga club)
Shun Horiki

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2018年2月10日土曜日

「3番目の金曜日」に、会いましょう。|《Friday Lounge -The third Monday of the month-》at Café Apres-midi

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


今年も、個人的な「目標」がいくつかある。

「目標」なんていうとなんだか大袈裟で、「毎日」だったり、「毎月」だったり、「この1年で」っていうのもあれば、「そのうち」とか「いつかは」みたいなものもある。
期限をちゃんと設けてないものもあるから、去年から持ち越してるものも、まあまあある。
そんなの目標とは言わない!と思う人もいるかもしれないけど、それ以外にピンとくる言葉が見当たらない。
なんだろうなぁ、「メモ」よりは少し大切で、「夢」よりは少し現実的。そんな感じ。

そんな、今年の目標のうちの、ひとつ。
目標、というよりは、決めたこと。
それは、今年の「3番目の金曜日」の《Friday Lounge》のプロデュース。

《Friday Lounge》は、渋谷にある「カフェ・アプレミディ」で、毎週金曜日に週替わりでレギュラーDJが毎回ゲストを呼んで、良質な音楽を届ける「空間」。
イベント、とか、パーティ、という言葉は、あまり似合わない。
「Lounge=ラウンジ」は、「休憩室」「社交室」という意味を持つけど、それとも違う。
シャープな部分はありつつも、もっとこう、柔らかくて、あたたかい「空間」。
だいたい「○○室」という言葉自体が、堅苦しいよね。

もともと「3番目の金曜日」の《Friday Lounge》は、International Gallery BEAMSのmaaくんが担当していて、今年はそこに、私とWataru Sakurabaくんが参加する形に。
太陽の光が水面で揺らめきながら反射しているように、すべてのことを、あらゆる方向へ、拡張できたらいいな。

2月の「3番目の金曜日」は、16日。
今回お招きしたゲストは、このおふたり。

まず、世界中から人が集まる日本の野外/オープンエアーパーティ『rural』の主催であり、昨年は日本だけでなく、ロサンゼルスのNTS Radioや、フランスのRinse FMにも出演した、Naoちゃん。
この「3番目の金曜日」のお話をいただいたときに、一番最初に思い浮かんだのが、彼女だった。
テクノや硬めの音のイメージが強い彼女が、どのようなプレイをするのかがとても興味深い。



そして、先日の代官山UNIT/SALOONの「FRUE -Deep into “New” South America-」も大好評だった『SUBMARINE RECORDS』主催のNOGAWAくん。
深海で行なわれているダンスパーティのような”抜け感”のあるパーティメイクは、その手段も、センスも、もちろん音も、すべて抜かりない。
気がついたら「あれ?ここ、どこだっけ?」という具合に、まわりの景色が変わってる感じ。
まるで、眠りに落ちるみたいに、あたたかく、心地よく、人魚たちが舞う海の底へ連れて行ってくれる。





今年の「3番目の金曜日」は、ちょっと特別に。
まずは、2月16日にお会いいたしましょう。
心より、お待ちしております。(;



▼Infomation
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Friday Lounge

2018/2/16 fri at Café Apres-midi >>> map
OPEN / START 20:30
CHARGE: FREE

Guest DJ:
Nao [rural/LIVING ROOM]
NOGAWA [SUBMARINE]

DJ:
maa [Hamon Radio]
DJ Emerald
Toru Hashimoto [SUBURBIA]

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この日は、「クラブ」「ダンスフロア」といった場所とは異なる空間でのアプローチが楽しみなおふたり、Nao [rural/LIVING ROOM]と、NOGAWA [SUBMARINE]を迎えて。
歴史を感じさせる上質で味わい深い音楽から、地下(=アンダーグラウンド)の中だけで広がりを見せる「特異点」とも言える音楽まで。
第3金曜日の夜の海へ、どうぞ気の向くままに泳ぎにいらしてください。



《Friday Lounge -The third Monday of the month-》
2018年の毎月第3金曜日は、渋谷と原宿のちょうどあいだに位置するビルの5階「Café Apres-midi」にて、maa、Wataru Sakuraba、DJ Emeraldの3人のDJによる「Friday Lounge」を開催しております。



2018年1月29日月曜日

東京都庭園美術館『装飾は流転する』

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


白金台にある「東京都庭園美術館」へ。
いわゆる「美術館」とは少し趣の違う朝香宮夫妻(皇族の一家)の邸宅だったこの建物は、それ自体がすでに、ひとつの美術品のよう。
こだわり抜かれた美意識が、細部の細部まで散りばめられていて、毎回行くたびにうっとりして、何度も何度もため息をついてしまう。(はぁ・・・!)


今回は「装飾」を軸にして、多種多様なアーティストが集合する「装飾は流転する」という展示。
こういったコンセプトをメインにおいた展示は、出会わないものたちが出会う「偶然性」が、作品と作品のあいだの空気を埋めて尽くしていて、心がどうしようもなくワクワクする。

行き過ぎた「装飾」から、目を凝らさないと気がつかない「装飾」、
再編集/サンプリングされた「装飾」、日常の延長線上にある「装飾」まで。
どの作品も共通しているのは、触りたくなる「質感」と、覗き込みたくなる「繊細さ」。


その中でも印象的だったのは、コア・ポア(Kour Pour)というアーティスト。







絨毯の修復職人だったイラン系イギリス人の父親からインスピレーションを受け、ペルシャ絨毯の柄をベースに、独自の感性をキャンバスに重ね合わせていくそのスタイルは、唯一無二。
絨毯の歪みまで再現していて、遠目に見るとそれが絵だとは分からなかった。
近づいていってよーく見ると、愛嬌のある絵のタッチと色合いがとても印象的で、思わず頬が緩んでしまうものも。
ヒップホップとの出会いがひとつのターニングポイントだと分かる、彼のドキュメンタリー映像もとても興味深かった。
それぞれの作品が、一曲ずつ楽曲になったらどんな風になるんだろうなぁ。(妄想)



コア・ポアの作品は、そのほとんどが「新館」の方に展示されていたのだけれど、シックな庭園美術館の本館には、それぞれの質感が美しく混ざり合う、ヴィム・デルヴォワ、ニンケ・コスター、髙田安規子・政子などの作品。
そして、それらに相反するかのように、山縣良和の作品が違和感を醸し出して、それぞれの魅力を引き出す。

ヴィム・デルヴォワ

ニンケ・コスター

髙田安規子・政子

山縣良和


彼らの試みを見る時、
私たちは装飾という行為が、
生々しい現実を複雑なまま認識するために必要な切り札だということに気がつくのです。
––––––––––––– 東京都庭園美術館 オフィシャルサイトより


この「生々しい現実を複雑なまま認識する」感覚は、この展示に訪れる数日前に観た映画「ブレードランナー 2049」で、強烈に感じたところだった。
また、この情報過多な現代に対して・・・"対して"じゃないな、現代"の中で"、日々抱いている感覚でもあった。
庭園美術館を出た瞬間、私の中で、それらの「混沌」「混乱」の歯車が、ゆっくりと回り出した。


「いびつにしたい」とも思うし、
「きれいに納めたい」とも思う。
それが、人間の本能なんだろうな、と思う。




「本館」と「新館」をつなぐ通路からの景色。
澄んだ空気の中で、月が美しく浮かぶ夜。
明けて次の日、東京では4年ぶりの大雪。







2014年から2016年に制作された、スコットランドのHugh Smallによるピアノ・ソロ曲集『Piano Music』は、深深とした空気にぴったりの作品。

HUGH SMALL - Mission Statement

彼は、女性シンガーのAnna Howsonとニュー・ウェイブ色の強いデュオ「Vazz」としても活動をしており、最近、ベルギーのレーベル《STROOM 〰》から『Submerged Vessels And Other Stories』をリリースしており、そのボーナスCD付属として、この『Piano Music』がついてくる。
本編の『Submerged Vessels And Other Stories』は、バンドサウンドの楽曲と、ピアノソロの楽曲が入り混じった構成になっている。
この、「ん?」とちょっと振り返りたくなる存在が、たまらなく好き。

VAZZ - Mezquita


VAZZ - Pearls Dub