2016年8月7日日曜日

西と東と、Red Light Radio|アムステルダム -2日目 PART2-

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。



オリジナルブランドと古着を取り扱う「JUTKA & RISKA〈ユッタク&リスカ〉」のディスプレイは、色ごとに区切られている。
ひとつひとつがどれも個性的で、目移りしちゃう。色鮮やかなアイテムが多い。

高級ブランドが並ぶピーテル・コネリス・ホーフト通り(Pieter Comelisz Hofftstraat)を抜けたところにある、インドネシア料理店「SAMA SEBO〈サマ・セボ〉」でランチ。


またしても、気がつけばもう18時近く。
外が明るいから、時間の感覚がまったくつかめない。
ランチタイムはすでに終わっていたんだけど、「しょうがないなぁ、特別だぞ!」といった感じで、伊武雅刀似の店員さん(おそらくインドネシア人)に、奥の方で唯一空いてるテーブル席へ連れて行ってもらう。
店内にはバーカウンターもあるんだけど、待ってる人がいるくらいお店は大盛況。
出てきたのは、伝統的なインドネシア料理。


一言で説明するのはとってもむずかしいのだけれど、欧州の料理とは味付けが全く違って日本人の口にとてもあうのか、ものすごく美味しかった。



すぐそばにあるミュージアム・スクエア(Museumplein)という広場。


閉まりかけのワゴンに出ていたワッフルとコーヒーを買って、ベンチに座ってひとやすみ。
ゆっくりした時間が、目の前に流れている。
自分という存在をあらためて確認する。
日々の生活がバタバタと忙しいと、つい忘れがち。


広場から続いているムセーウム通り(Museumstraat)は、アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)の建物の中を通っていて、歩道は両端、自転車道は中央。
歩いていると、ビュンビュンとものすごい数の自転車に乗った人たちが通り過ぎていく。




20時にもなれば、飲食店以外のお店はほとんど閉まっているので、今夜行く予定のクラブ「Canvas」へ行くまで、逆U字型にアムステルダムの街を練り歩く。

まずは、北西にある「Rush Hour Records」を通りから覗く。


どうやら最近移転をしたらしく、アンダーグラウンド、という言葉からは想像できないほど、店内は広くてきれいそう。



そのRush Hour Recordsから東へ歩いて、10分弱。
雰囲気は、渋谷のセンター街や新宿の歌舞伎町を思わす繁華街で、どこもかしこもワイワイガヤガヤしている。
ずんずんと人混みをすり抜けて行って、「旧教会(De Oude Kerk)」を囲むアウデーケルクス広場(Oudekerksplein)沿いにある「Red Light Radio / Records」へ到着。
外から見えるのは、Red Light Radioの方。



オンラインラジオなので外には音が聴こえない。(てっきり外にも流れているものかと思っていた)
Red Light RadioのSoundcloudのアーカイブをよく聴く私にとって、自分がその現場の前に立っていることはなんだか不思議な感じ。



それは、学生のとき、スペイン坂スタジオ(TOKYO FM)に行ったときと同じ感覚。
(そのときから自分はやってることが変わってないのね)

このエリアはいわゆる「飾り窓地区」と言われる場所。
道路に面したドアはほぼ全面ガラス張りで、ひとつひとつ部屋が箱みたいに区切られている。
部屋の中は赤色で、その中に下着姿の売春婦がお客さんを待っている。
このRed Lightの隣にも、まさにその部屋が並んでいた。(というかむしろそのエリアでRed Lightがある方が不自然な感じ)

ただ、まだ営業時間前なのか(何度も言うけど、まだ空は明るい)、部屋の中で下着姿で焼きそばを食べていた女性と目が合ってしまい、なぜかお互い会釈をした。(ただの気のせいかもしれない)



しばらくその光景が忘れられないまま、Prins Heerlijk〈プリンスヒアレック〉でカフェラテを飲んで、アムステルダム中央駅(Amsterdam Centraal Station)方面を眺めながら、今度は南東へ向かう。
22時過ぎれば、さすがにもう夜。
目的地の「Canvas」は、中心部から少し離れている。
にぎやかだったエリアに背を向けて、住宅街の方へ。



1671年に造られた、現在アムステルダムで唯一の木造の橋となる、マヘレの跳ね橋(Magere Brug)を渡った後、ウェースペル通り(Weesperstraat)をひたすら歩き、ようやく「Canvas」に到着。

Canvasは、Volks hotel〈フォルクスホテル〉の中にあるレストラン・クラブ。
一階にはバーもあって、金曜日を思いっきり楽しんでいる人たちで賑わっている。

エントランスを通ってエレベーターで7階へ。
中に入ると中央にバーカウンターがあり、周りはなんと360度ガラス張り。アムステルダムの街並みが一望できる。
いわゆる大音量で踊るような雰囲気ではないのだけれど、たまにフロアでふらっと踊っては、ちょうど友人も来たので外を眺めながらいろいろおはなし。
DJブースの上には、アンティークっぽいランプがいくつかぶら下がってた。


おめあてのRush HourのRobert Bergmanは結局聴けず、結局深夜バスに乗ってうとうとしながらホテルへ。



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この約2週間後、日本が誇る音楽家であるXTALさんが、このRed Light Radioに出演。
しかも、日本の音楽(ジャパニーズ・ディスコ/ファンク/ソウル)のみの1時間半。
Red Light Radioでは大好きなmixがたくさんあるんだけど、やっぱりこれは日本人としてうれしい事件。
XTAL名義以外でも、Traks Boys、(((さらうんど)))、JINTANA & EMERALDSなど、どれも抜群にセンスのよい楽曲を生み出す彼は、尊敬する音楽家のひとりです。
はぁ、現場にいたかったなぁ。

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XTAL - Japanese Disco / Funk / Soul Mix on Red Light Radio 2016.05.14

2016年6月17日金曜日

ゴッホ美術館で見た、青い空|アムステルダム -2日目 PART1-

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


2016年4月29日。
クロワッサン、チーズとハムと卵、フルーツがいっぱい入ったヨーグルト。
追加でつけた朝食のオプションに、大満足。
荷物を整理して、雨が降るグレー色のアムステルダムの街へ繰り出す。


雲の低さが、私とアムステルダムの街の距離を縮めてくれる。
突然降り出した雹(ひょう)は、私を歓迎してくれているサイン。
それくらい、街の雰囲気は穏やかさに包まれている。


トラムに乗って、ライツェ広場(Leidseplein)まで行って、徒歩でゴッホ美術館(Van Gogh Museum)へ向かう。
相変わらず、通りかかるお店ひとつひとつに目がいってしまう。




中心部のトラムの運行時間は間隔が短く、わりとすぐ次のトラムがやってきてとても便利。
駅によるけど、歩くのが好きな人なら、1〜2駅なら全然歩ける距離なのもまた魅力的。
(だから小回りのきく自転車を利用する人が多いんだなぁ、と納得。)


ゴッホ美術館に到着。
事前にeチケットを買ってあったので、行列に並ぶこともなくすんなり入館。
※日本語サイトあり



ゴッホ美術館は、その名の通り、オランダ南部出身の画家であるフィンセント・ファン・ゴッホの、世界最大のコレクションを収蔵している美術館。
ゴッホと言えば「ひまわり」や「夜のカフェテラス」で有名だけど、日本の浮世絵の影響も受けていることや、弟テオの存在が彼の中でとても大きいこと、ゴーギャンと過ごした時間と、耳切り事件、そしてその後の彼の生活と死に至るまでと、また、それらについて真実と、飛び交う様々な憶測、など、彼の一生を作品とともにしっかりと堪能することができる。日本語のオーディオガイドもある。



中でも印象的だったのは、横長のキャンバスに描かれた「荒れ模様の空の麦畑(Wheatfield under Thundercloud)」という作品。
荒れ模様、と言っても、絵の半分以上は、少し湿った、でもあたたかみのある青い空が広がっている。

私は、その一枚の絵の前でしばらく立ち尽くした。
その時点ではまだ、オーディオガイドはまだ聞いてなかったのだけど、作品を見た瞬間に、晩年のゴッホの孤独が強烈に伝わってきて、涙が止まらなかった。
それは、悲しみに満ちているわけでもなく、誰かに助けを求めているわけでもなく、心を平穏に保とうとするわけでもなく、ひたすら純粋な彼自身の心情が目の前に広がっている。言葉にするならこんな感じ。(結論、そう遠くない内容がガイドから流れてきた。)

部屋にポストカードを飾って、今でもその時の気持ちを思い出すことがあるけど、絵画はやっぱり、目の前で生で見るのが一番。
それ以上は、ない。





すぐそばにある、アムステルダム市立近代美術館(Stedelijk Museum Amsterdam)やミュージアム広場を横切る。




雨上がりに見る、色とりどりの花たちは一段と美しい。




少し北西へ進んで、アムステルダム市街地で一番広いフォンデル公園(Vondelpark)へ。
ゴッホの余韻に浸りながら、のんびりお散歩。
大きな噴水のまわりには、小さな子供からご老人まで、みんな気ままな午後を過ごしている。




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ロンドンのJonny Nashによる、息をのむ美しさの極上アンビエンス。 静寂の奥の、さらに奥の方に意識を向けると、オーロラのような薄い膜が浮かび上がっては消えていく…そんな感覚。
彼自身のレーベル「Melody As Truth」の1枚目がこの曲を収録した12インチで、先日セレクトしたSuzanne KraftのLPは同レーベルの3枚目。
次のリリースが待ち遠しい。

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Jonny Nash - Retreat



2016年6月8日水曜日

Hallo, Amsterdam!|アムステルダム -1日目-

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


2016年4月28日。
さようなら、ロンドン!



ヒースロー空港から、海を越えて、オランダのスキポール空港へ。

ターミナルを電車で行き来するヒースロー空港と比べると、とってもコンパクト。
迷うことなく電車乗り場まで辿り着き、アムステルダムの市営交通会社(GVB)が運行する、すべての公共交通機関(バス、トラム、地下鉄、フェリー)が乗り放題のトラベルチケット(3日間用)を購入。


乗車時と降車時に、専用の機械にピッとタッチするだけ。チケットには路線図もついていて、とっても便利。


初日は、とりあえず目的もなく、街をぶらぶらお散歩。
もう、とにかく、目に映るもののひとつひとつが、すべてかわいらしい。





オランダ語は私にとってとても難解だけど、建物や看板の形や色は、とてもシンプルでわかりやすい。
丸みを帯びたフォントに、三角の屋根、四角い窓。
子供の頃に描いた絵が、そのまま現実になってる感じ。



アムステルダムの中心部は、扇の形をしていて、その扇の横方向にに5本の線を入れるように運河がある。
なので、ちょっと歩けばすぐ橋があって、運河が見える。
太陽の光が反射して、水面がキラキラと輝いて、街全体をデコレーションしているようで、つい見とれてしまう。

ただ、アムステルダムの道路は、歩行者専用と、自転車専用と、トラム(路面電車)兼車(バスも含む)専用と3つがあり、特に、自転車に乗っている人がものすごく多い。
なので、建物や運河に見とれて、自転車専用の道を歩いてしまう、ということが何度もあった。(そもそも私は東京でも、車線の中を歩くのが苦手なんだけど…)


通りかかったダム広場の前には、大きな移動遊園地。
60〜70年代は、世界中のヒッピーがここに集まっていたとかいないとか。





夜ごはんは、オランダの伝統料理レストラン「Petit-Restaurant de Rozenboom」へ。



頼んだものが結局なんという料理なのかがよくわからないまま(食べたことのない味、というよりは、あまり味つけがされていなかった?)、中心部から少し離れたところにある、宿泊先の「Hotel Not Hotel」へ。

吹き抜けの大きなロビーにある小型のバスが宿泊スペースだったり、天井から椅子がぶら下がっていたり。(しかも実際に登って座ることができる)
部屋はどこも小さそうだけど、ユーモアに溢れた、とっても斬新なホテル。
バストイレは共同だけど、ただ寝るだけのシンプルな部屋って、「旅」という本質にあっている気もする。




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アムステルダムの運河に囲まれた街を歩いていると、この、ぷくぷくとした音が特徴的な”Bubble World”を思い出す。
2014年リリースのこのEPに出会った時は、ただただ、ドキドキしてた。
ヴァンクーヴァー出身のユニット、Pender Street Steppersによるもの。レーベル”Mood Hut”は、センスの光る作品が多い。

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Pender Street Steppers - Bubble World



2016年6月4日土曜日

ソーホーのレコード屋巡りと、ダルストンのお気に入り|ロンドン -4日目-

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。


2016年4月27日、乾いた空気と眩しい太陽の光に包まれた、水曜日。
ちょっと遅めの朝食は、クイーンズ・ロード・ペッカム(Queen's Road Peckham)駅の下にある、Blackbird Bakeryにて。


日替わりで焼かれるパンが違うようで、種類もとっても豊富で美味しい。
大きなマグカップに入ったカフェラテと、とてもよく、あう。




ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground)に乗って、大きなもくもくした白い雲が浮かび上がる景色を見ながら、中心部へ移動。
歴史的建造物を見るのは、次週行くパリで、と決めているので、ロンドンでは、今の自分の生活に直接的な場所 /ものを求めて、まずは、レコード屋さんが密集するソーホー(Soho)エリアへ。



Phonica Records
ダンスミュージック中心のレコード店。CD、Tシャツやバッグなども販売していたり、ソファーでゆったりすることもできる。



Sister Ray
ロック全般が多い印象。



Reckless Records
1ユーロの棚から、帯付きの日本版のレアなレコードまで。ジャンルも多岐に渡る。



Sound of the Universe
細かく丁寧にジャンルわけされていて、こだわりのあるラインナップ。ソウル系が充実。



何枚かレコードを買った後、大英博物館のそばにある本屋さん「London Review Bookshop」へちょっとだけ立ち寄る。


ジャンル別に様々な書籍がきれいに並べられており、現地の書籍をチェックするにはとてもよさそう。



通りを曲がったところで、たまたま見つけたティールーム「Tea and Tattle」でひと休み。


一階は、東洋系、アフリカ系の本やポストカード、お面などの雑貨が並び、喫茶店は、地下一階。1908年からある老舗。



ストロベリー&ブラックペッパージャムと、マイルドなクリームチーズがのったイギリス定番のスコーンは、甘すぎないクラシックな味。シンプルでとっても美味しい。
セットで、ふわっと香ばしいアールグレイの紅茶(ティーカップ約4杯分)ととてもよく合う。



繁華街の中は「Fish&Chips、まだ食べてないの?それなら、うちのお店へおいでよ!」と言わんばかりの看板があちこちにあったけど、ここはゆっくりとした時間が流れている。



バスに乗って、一気に北東方面へ。
到着したダルストン(Dalston)エリアは、イースト・ロンドンの北側にあり、”自分が欲しいものは自分で見つけるスタンス”というような雰囲気。観光地っぽさはない。



可愛らしい古着がディスプレイされている「Here Today Here Tomorrow」は残念ながら定休日。



Eldica」は、ファンク、ソウルが多めの中古レコード屋さん。
リカちゃん人形みたいなかわいい金髪のポニーテールの女の子がやってきて、店員のおじさんにいろいろ質問してた光景はとても微笑ましかった。



クラブ「Dance Tunnel」を通り過ぎる。


Pender Street Steppers、 Huerco S.など、日程があえば行きたかったイベントがいくつか。


チェーン店のリサイクル・ファッション・ショップ「Traid」は、日本でいうモードオフみたいな感じ。掘り出し物があればラッキー。



そして、今回ロンドンでもっともお気に入りの古着屋さん「Pelicans & Parrots


代官山の古着屋さん「slow」にも少し雰囲気は似ているんだけど、もっと野性的な感じ。
店内に並ぶアイテムはもちろん、店員さんのジョークも最高。奥の方まで歩いていった甲斐があった。


麻製のトップスと、パイナップルのオブジェを買って、来た道を戻り、さっき行った「Eldica」のななめ向かいにあるレストラン「White Rabbit」へ。
ミランダ・カー似のとってもキュートでフレンドリーな店員さんが、外が見えるガラス越しのカウンター席へ、優しくエスコートしてくれた。


後ろのテーブルには、レコードが無造作にばさばさっと置いてある。
シンプルなのにどれもひとひねりきいたメニューは、白ワインにとてもよくあう。



19時過ぎだけど、外はまだ17時みたいに明るい。
目の前にはJAZZ BARもあるし、もっと暗くなったら、この通りはもっと賑やかになるんだろうな。


夜は、ロンドンに来たら絶対行こうと決めていたライブスペース「Cafe OTO」へ。


店内で販売されているレコードは、ノイズやワールドミュージック(日本のものも含めて)が多く、どれもレアなものばかり。
タルコフスキーの「惑星ソラリス」のサントラのLPなんて、初めて見た。

この日は、前衛的なミュージシャン3組。
ハイライトは、Lisa Busbyによるライブのラストナンバー。
ターンテーブルの針を、極限までギリギリ触れる程度に、「シェルブールの雨傘」のレコードの溝に置いて、一周回転する音をループさせて、その上に自分の声やノイズ、サンプリングした音などを重ねていった、後の、感動のクライマックス。
予測のつかないアイディアとライブパフォーマンスに、会場にいる人たちはみんな、驚き、息をのみ、そして拍手喝采。素晴らしい夜だった。


ライブの余韻に浸りながら、小雨の中、ロンドン最後の夜の空気を、全身に染み込ませる。


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曇りがちなロンドンの風景によくマッチする、Suzanne Kraftの”Male Intuition”が収録された、昨年リリースされたLP「Talk From Home」は、どの楽曲も異国感があり、でも、どこか懐かしさもある、やわらかな曲線が美しい、今でもまだよく聴く一枚。

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Suzanne Kraft - Male Intuition