2016年5月21日土曜日

雲のカンバス|ロンドン -2日目 PART1-

※こちらの記事は、HOUYHNHNMブログ『Escape by Melody《メロディによる逃走》』に掲載されていた内容です。



2016年4月25日、月曜日。
ロンドンの朝の空は、真っ白い曇が覆いかぶさっている。
その"白"が、景色をより際立たせているようにさえ見える。



駅でカフェラテとサンドウィッチを買って、ハイド・パーク(Hyde Park)へ。
ハイド・パークと言えば、The Beatlesの1964年のアルバム”Beatles for sale”のジャケットの撮影場所だったり、The Rolling StonesやPink Floyd、Queenなどのイギリスを代表するロックバンドのコンサートが行われたりもする場所。


とにかく、広い。
その広さ、日比谷公園の約9倍。(方向を間違えたら戻るのが大変そう)
ちょこんと立つピーターパンの像を横切ったあと、中央にある湖には白鳥や鴨がすいーっと泳ぐ姿が見える。木々の上には本当にたくさんの鳥たちが歌を歌い、その下には追いかけっこをするリスたち。
絵本の中に入り込んだような光景。
公園内の歩道には、犬を連れた人やジョギングする人、小さい子供連れの家族や、ゆっくり散歩する老夫婦など、日常的なロンドンを垣間見ることができる。
私にとっての特別な時間が、少しずつこの空気に馴染んでいくのが、うれしい。




公園をしばらく歩いて、そのまま南へ。
ヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)、通称"V&A"へ移動。
ここは、今年の1月に亡くなってしまったデヴィッド・ボウイのドキュメンタリー映画「デヴィッド・ボウイ・イズ(David Bowie is)」の回顧展の舞台でもある場所。


ロンドンの美術館や博物館は、基本的に入場無料だから嬉しい。


何世紀にも渡る王室のコレクションから、現代のアートカルチャー、ファッション、などの展示がずらっと並ぶ館内。こちらも、とにかく広い。
個人的には、世代別に展示されているジュエリーコレクションが印象的だった。(撮影禁止エリアなので写真はなし)
18世紀のオランダ生まれのヘッドドレス、19世紀のフランス生まれのブレスレット、そして、イギリス生まれのネックレス”Life Began in Water”など、挙げればきりがない。






地下鉄でエンバンクメント(Embankment)駅まで行き、ハンガー・フィールド橋(Hungerford Bridge)でテムズ川を渡り、ヘイワード・ギャラリー(Hayward Gallery)へ到着。
ここはめずらしく、入場料が有料の美術館。その価値があるというので、やってきた。


ところが、目の前に建物はあるのに、入口になかなか辿り着けない。
エントランスの矢印通りに進んでも、ぐるっと回って、さっき自分がいたところに戻ってきてしまう。

そこに、ちょうどカメラを首からぶらさげた、おなかの大きなおじさまが通りかかったので、声をかけてみると…どうやら、長い間、改装工事のために休館中とのこと。
公式サイトによると、2017年まではやっていないみたい。残念。

入口は塞がれているものの、その上の大きな壁に、奈良美智さんのポスターをスタッフの人たちが設置中。
「休館中はここのポスターが時々変わるんだよ」とさっきのおじさまが嬉しそうに教えてくれた。
その後、おじさまは無我夢中でパシャパシャと一眼レフのシャッターを切り出した。


早々に気を取り直して、今度は、現代アートの殿堂、テート・モダン(Tate Modern)へ。
テート・モダン方面のバス停で待っている人たちの後ろに並ぶ。
ただ、いつまで待っても、バスが到着しない。
どうやら私たちが待っているバス停は、道路の工事の都合で、バスが止まらないらしい。(バス停にさりげなくメモが貼ってあったことにやっと気がついた)
待ちくたびれた私たちは、みんなでお話ししながら歩いて向かう。
アートの勉強をしているという、韓国人のかわいらしい女の子は、私と同じく、ヘイワード・ギャラリーで迷子になったらしい。
彼女は、ロンドンに来る前にパリにいたようで、ロンドンの街の綺麗さに感心してた。パリは、どうやら汚いらしい。
でも、東京はロンドンよりもっと綺麗だよね!と付け加えてくれた。
早朝の渋谷駅を思い出して「そうだっけ…」とうっすら思いつつ、ちょっと苦笑い。



個性的なビルが建つ街並みを抜けて、やっと到着したテート・モダン。


99mの煙突を持つこの建物は、もともと一時的な発電所として作られたため、1981年時点ではすでに使用されておらず、取り壊し予定だった。(正確にいうと、1993年には、一部の取り壊しは進んでいた)
その後、国立美術館であるテート・ブリテン(Tate Britain)の展示・収蔵スペースが不足したときに、ここを使おう!ということになり、2000年に改造して今に至る。
テート・モダンとしては16年だけど、建物自体は半世紀以上の歴史があることもあり、とても人気のスポット。平日にも関わらず、かなり混雑していた。
クロアチア出身のアーティスト・Sanja Ivekovicに出会えたことや、以前日本で見たときに衝撃を受けた、ドイツの現代美術家のRebecca Hornの作品に再会できたのが心に残っている。
The フェミニズム。




テムズ川沿いを、ロンドン橋(London Bridge)を横目に、東に向かってしばらく歩く。
ブループリント・カフェ(Blueprint Cafe)というモダン・ブリティッシュ・レストランへ。


眺め最高、今が旬のアスパラも美味しく、スタッフの方もとても親切で、ほっと一息。


そんな中、いかにもロンドンらしい、突然の強い雨。
ガラス越しに外を見てみると、傘をさしてる人は誰一人おらず、まったく構わずに(少なくとも私にはそう見える)そのままびしょ濡れになって歩いている。これぞロンドンスタイル、といった感じ。


レストランを出る頃にはすっかり雨はあがって、晴れ間がタワー・ブリッジ(Tower Bridge)の向こう側に見える。
どんよりした雲の下で、水色のラインが美しく映える。


橋を越えると、ロンドン塔(Tower of London)が左側に見えてくる。


かつては処刑場(しかも当時は一大見世物)だったこともあってか、非常に重々しい雰囲気。
一度止んだ雨もまた降り出してきたので、急いで地下鉄に向かい、次は北上。
今、ロンドンで最も注目されていると言われる"イースト・ロンドン"エリアにある、ブリック・レーン(Brick Lane)通りへ向かう。



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イギリスのミュージシャンであるDavid Bowieの1977年に発売されたアルバム「Low」。(レコーディングは、ベルリンで行われているのだけれど)
このアルバムのB面に収録された曲は、すべてインスト。
どの楽曲も、遠くに見える景色から、ゆっくりと、やさしく手招きをしてくれているようで、自分がまだ行ったことのない世界が目の前に広がっていることを教えてくれる。
私にとって、ロンドンという街そのものがそうであるように、
ポップなチャーミングさと、不確かな怪しさが共存する彼の存在もまた、その"世界"のひとつ。

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David Bowie - Weeping Wall



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